感受性が強い方は、特に大きく影響を受けてしまうストレス。身体症状に悩まされている方もいるのではないでしょうか。
世界中でも、ストレスが原因とみられる心と体の病が急増しているそうです。
今回はストレスに関連するコルチゾールの働きと、ストレスが与える影響を探っていきたいと思います。
コルチゾール
コルチゾールは副腎から分泌される抗ストレスホルモンです。
副腎でつくられるホルモン | |
---|---|
皮質のホルモン | ステロイドホルモン(コルチゾール、アルドステロン、DHEA) |
髄質のホルモン | カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン) |
副腎は血圧、血糖、水分・塩分量などの体内環境を常にちょうど良い一定の状態に保つためのホルモンをつくっています。
コルチゾールの主な働きは、肝臓での糖の新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進、抗炎症および免疫抑制です。
ストレスによって分泌が亢進され、心と体を元気づけます。コルチゾールは最終的に脳に吸収され無害化されます。
多少の緊張は体にとって必要なスパイスでもあります。
ストレスの反応のメカニズム
- ストレスを受ける
- 脳内で扁桃体が活性化する。
- 「不安や恐怖に対処せよ」という指令が視床下部に伝達される
- 副腎からコルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのホルモンが分泌され血流に乗って全身にいきわたり臓器や自律神経が様々な反応を起こす
脳はストレス反応の中枢と考えられています。中でも海馬、扁桃体、視床下部などの脳部位はストレス反応に対して特に重要な脳領域です。
ストレス反応に関連するホルモン
- アドレナリン
- オステオカルシン – ストレスを受けた後、数分以内に骨から放出され、副交感神経系の活動を阻害する。また、副腎が機能不全になり、オステオカルシンが増加すると急性ストレス障害を起こす。
- エストロゲン(女性ホルモン)
- テストステロン(男性ホルモン)
- コルチゾール – ストレスを感じたときに放出されるホルモン。血圧や血糖レベルを上げ、緊急時に必要ない臓器の活動を抑制する。
- ノルアドレナリン – ストレスを感じたときに放出されるホルモン。注意と衝動性に対して敏感になり、心拍数を上げ、脂肪細胞からエネルギーを放出させる。メリットは、やる気を高める、集中力や判断力、長期的な記憶、ストレス耐性を強める。過剰に分泌されるとイライラしやすくなるため、「怒りのホルモン」とも呼ばれている。
3段階のストレス反応
◆第1段階 警告反応期
ストレスによって一時的に身体機能が落ちますが、抗ストレスホルモンが分泌されて身体機能を高めることで対処します。
◆第二段階 抵抗期
長引くストレスに対して、普段よりも抵抗力が強くなっている状態です。つまりストレスで気を張っている時期で、この状態はエネルギーが必要になります。
◆第三段階 疲憊期
身体が疲労困憊してしまった状態です。睡眠や食事などが乱れ、免疫力も低下し、身体機能が低下してしまいます。生活に支障が出てくると、心の病気につながっていきます。
長期のストレス
「我慢するストレス」は長期的に受けるストレスです。
このストレスは職場や家庭の人間関係などに起因する場合が多いです。
また慢性的なストレスでは過去に起きた出来事や未来の不安を繰り返し想像するなどといった、人間がつい行ってしまう悪い思考習慣で増幅されるものもあります。
ストレスが長引くと
◆長期に渡りコルチゾールが過剰に分泌され、自律神経のバランスを崩すだけでなく、血圧や血糖値が上がり過ぎてしまい、結果的に免疫力を低下させてしまいます。
◆疲労が積み重なると、休みなくコルチゾールの大量分泌を迫られるため、副腎自体がやがて疲弊。すると、副腎の機能が低下するとともに、コルチゾールも枯渇していきます。血圧が下がり、血糖値も下がります。
◆心臓および皮膚に損傷が現れ、脳の容積が縮小することが確認されています。
高血圧(その結果、心臓病を誘発)、筋萎縮、成長の阻害、免疫低下、不眠症、腹痛、消化不良、口内炎、耳鳴り、円形脱毛症、自律神経失調症、精神疾患などを引き起こします。
◆自律神経やホルモンバランスの乱れにより、女性は女性ホルモン分泌が低下し、男性は男性ホルモンの分泌が低下します。
・女性はエストロゲンが減少し男性ホルモン優位になることにより、角質が増え、皮脂分泌によるべたつき・毛穴が開く・ニキビができる、肌がたるむ、攻撃的になるなど心身へ影響がでます。
クラシエのサイトによると、ストレスによるニキビ発症は、
ストレス負荷 ⇒ 表皮の「アロマターゼ」低下⇒ 男性ホルモン過多 ⇒ 過剰な皮脂分泌 ⇒ ニキビ発症
・男性はテストステロンが減少することにより、抑うつや不安感、発汗、性欲の低下、勃起障害(ED)などの症状が表れます。
海馬の萎縮
海馬は、記憶・学習能力に関わる脳部位です。
海馬はストレスに対して非常に脆弱であるとされ、心理的・肉体的ストレスの負荷により長期間コルチゾールに曝露されると神経細胞の萎縮を引き起こします。
また、最近ではストレス負荷が海馬歯状回における神経新生を阻害することで海馬機能に変化を与え、記憶・学習能力や情動行動制御に関与していることが示唆されています。
コルチゾールと睡眠
コルチゾールの睡眠に関する働き
- 脂肪をエネルギーに変える作用がある。
- ノンレム睡眠時(とても深い眠り)は分泌が抑制される。
- 覚醒直前に多く分泌され、身体にストレスに対する準備をさせる「体内の目覚まし時計」
コルチゾール過剰分泌ー覚醒・不眠
コルチゾール枯渇ー倦怠感
多すぎても少なすぎても、不眠や朝だるくて起きられないなどの睡眠障害になりやすくなります。
日本人の睡眠時間は欧米諸国と比べると短く、特に女性ではその傾向が顕著に表れているというデータがあります(女性の睡眠時間が男性より短い国は、日本以外では韓国とメキシコくらいしか見当たらないとも言われています)
また、厚生労働省のデータによると、現在、日本人の5人に1人は、睡眠時に何らかの障害を抱えているとされています。
女性は社会進出によって、その傾向が更に増加しているとみられています。
ストレスに打ち勝つオキシトシン
オキシトシンは扁桃体に直接働きかけて、興奮をしずめストレスを抑えます。
◆美しい景色を眺める、好きな音楽を聴く、おいしいものを食べるなど、五感を刺激して人が気持ちいいと感じているときオキシトシンが増加
◆「抱擁」が究極のストレス解消法
◆人との共感で効果があり、愚痴を言い合う事もストレスの解消になるが、言葉では半分程度のストレス解消にしかならない
◆接触することで、言葉以上にストレスが解消される。親が子どもを抱くというスキンシップは、子どもの成長にとって非常に重要
◆手をつないだだけでもコルチゾール値が下がり、ストレスが解消する
◆誰かへの感謝や、相手を思いやる利他の心を持つことだけでも、オキシトシンが分泌される
◆親指と人差し指の間の付け根にあるくぼみ「合谷(ごうこく)」を、気持ちのいい強さで押すだけでオキシトシンが分泌されることが判明している。
ストレスのいろいろ
◆血中や唾液のコルチゾールは「その時点」 の値を表し,日内変動や急性ストレスなどの影響も受けやすい
◆毛髪や爪は過去数週間から数ヵ月のコルチゾールの「記録媒体」であり、慢性的なストレスを反映する
◆統合失調症と同様に、自閉症スペクトラム障害発生率と母体が妊娠中に受けたストレスにも、相関が認められている
◆アメリカの衛生研究所等が唾液成分からストレスの有無と排卵周期の関係性を調査した結果、唾液にストレスがある人が妊娠しづらいことが判明した
◆ストレス=変化という事が多い
◆ストレスを解消する方法の一つに「大声を出す」というやり方がある。叫ぶことで、脳内にノルアドレナリンが分泌され、ストレス解消になる
◆言いたいことを我慢せずに言うことが効果的。言い方や伝え方は大切
◆声・涙・唾液・オナラ・尿・便など、「体から出す」ことがストレスを和らげる効果がある。笑うこともストレス解消に大きな効果がある
◆若い時にストレスを多く経験した方が、長生きする傾向がある
◆医学的にもストレスが伝播するのは良く知られた話である。隣の人がストレスを抱えていると、自分の調子も悪くなってくる。逆に、元気が伝播することはない
◆個人によってストレス耐性が変わる
◆血液型によってコルチゾール分泌量が変わってくる 血液型についての記事はこちら