サイコパスの人間の大部分は殺人を犯す凶悪犯ではなく、通常の社会生活を営む異常人格者であるとされています。身近にいて、誰でも関わる可能性があるということです。
リスクを減らすためにも、特徴を調べていきましょう。
サイコパスとは
サイコパスの特徴は、極端な冷酷さ・無慈悲・エゴイズム・感情の欠如・結果至上主義です。
サイコパスは病気(いわゆる精神病)ではなく、ほとんどの人々が通常の社会生活を営んでいます。
そのため、パーソナリティ障害と位置付けられており、日本では反社会性パーソナリティ障害と名称されています。医学的(脳の構造的)にサイコパスと同じ状態であっても、反社会性がなければサイコパスとはなりません。
反社会性などの診断基準を満たす者は幼少期からの素行問題など行動面の異常を示すことが多いです。
中程度以下のサイコパスであれば、社会的成功を収めることも多いとされています。
脳の活動
◆扁桃体と眼窩前頭皮質および内側前頭前皮質との連結性が弱い
◆島皮質前部の活動が低下、島皮質の後部が活発、帯状回は低下
・扁桃体は「感情の欠如」に関わり、眼窩前頭皮質の異常または連結の弱さは、学習や自省、情動を抑えるといった「認知」に関わるとされています。
・内側前頭前皮質と連結が弱いことにより、即時に得られる報酬を過大評価し、行動がもたらす将来のコストを無視するといった傾向があります。
・眼窩前頭皮質の機能の低さは、嗅覚の鈍さにも関係するとされています。
・島皮質前部は「熱い認知」の主観的な感覚、島皮質後部は「冷たい認知」の客観的な感覚。
・帯状回は自省・葛藤などの心理プロセスにかかわる脳領域です。
2012年にオランダのフローニンゲン大学の研究者が行った実験の結果、実はサイコパスにも共感能力はあるが、通常はそれが「オフ」の状態になっており、自分がそうしたいときだけ「オン」にできる「共感スイッチ」が備わっている可能性が指摘されています。
表面的に魅力的に見せることができるのは、その為ではないかと言われています。能力がまったく欠如していないのであれば、更生への望みもあるのではと期待が寄せられています。
共感スイッチは、脳内のネットワークの弱さ(連結の弱さ)が関係していて、意識している時だけはオンの状態にできるようになっているのではないかと考えられます。
例えば、虐待・パワハラなどをする人が、一方では良い人であるといったことです。
戦士の遺伝子とサイコパス
モノアミン酸化酵素A(MAOA) 別名「戦士の遺伝子」と呼ばれる遺伝子は、ノルアドレナリンとセロトニンを分解し全体量のバランスを調整するという機能を司る遺伝子です。
人間の70%はこのMAOAの活性が高いタイプの遺伝子で、残りの30%はこのMAOAが低いタイプの遺伝子を持っています。
MAOAの活性が低い人はセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質がなかなか分解されず残ってしまいます。
セロトニンが多い・・・安心感・安定感を感じやすい・不安感を感じにくい
ドーパミンが多い・・・刺激を求める・衝動性・多動性・攻撃性に繋がりやすい
◆表情や音声から他者の感情を読み取る実験をおこなうと、「怒り」「喜び」「驚き」といった感情については一般人と同程度に読み取れるものの、「恐怖」「悲しみ」を察する能力には欠けていることがわかっています。
◆攻撃性は、攻撃的行動の学習をしなければ目立った影響は見られないとの研究もあります。
ADHDとサイコパス
◆ADHDはMAOAの活性が低い
◆ADHDの特徴は、衝動性・多動性・注意欠陥
◆前頭前皮質に発達の遅れ、もしくは機能不全が見られる
ジェームズ・ブレア 著「サイコパス -冷淡な脳-」によると、サイコパス傾向をもつ子供の75%がADHDを満たすことが分かっているそうです。
サイコパスは高確率でADHDを併発していると考えられます。
行為障害を併発したADHD患者のうち、一部は寛解せずに反社会性パーソナリティ障害に移行すると言われています。
しかし、共感性が高く、優しく、狡猾な印象がないADHDの人も多く、サイコパスは色々な要素がかかわっていると考えられます。
反社会性パーソナリティ障害
反社会性パーソナリティ障害の人は一種のトラブルメーカーに当たり、アルコール依存症、薬物依存症、異常性欲、性的倒錯(サディズム・マゾヒズム・露出症・小児性愛・窃視症・女装など)、犯罪、といった問題を起こしやすい傾向があるとされます。
事故、虐待、ストレス等で脳に損傷を受けたことで反社会性パーソナリティ障害を発症する場合がありますが、これは外傷性脳損傷やストレスによる前頭前皮質の機能不全で起こるものと推測されます。
反社会性は、加齢と共に30代までに軽くなる傾向もあります。おそらくホルモンバランスの影響なのでしょう。女性のテストステロンは男性の約5〜10%ですが強く作用します。
3つの反社会的人格
- ソシオパス的人格・・・親の育て方など後天的なもの
- サイコパス的人格・・・元来の性格
- 性格神経症
一般には、ソシオパスとサイコパスはほぼ同義なものとして扱われることが多いです。
反社会性と自己愛性パーソナリティ障害との違い
自己愛パーソナリティ障害・・・自分は優れているのだから人を使って当然だと考えて人を利用する
反社会性パーソナリティ障害・・・欲しいものを手に入れたり、自分が単に楽しむために行う。人を愛する能力や優しさは欠如している上、人の顔色を窺って、騙したりする傾向もある
サイコパスの特徴や性格傾向など
◆北米には少なくとも200万人、ニューヨークだけでも10万人のサイコパスがいる。
◆東アジアではアメリカに比べ、反社会性人格障害者の割合は極めて低く、およそ0.1%前後としている。
◆組織内の位置としては組織下層部よりも上層部に多い。
◆プレゼンテーションが得意な傾向がある。
性格傾向
◆外見や語りが過剰に魅力的で、ナルシスティックである。
◆恐怖や不安、緊張を感じにくく、大舞台でも堂々として見える。
◆多くの人が倫理的な理由でためらいを感じたり危険に思ってやらなかったりすることも平然と行うため、挑戦的で勇気があるように見える。
◆お世辞がうまい人ころがしで、有力者を味方につけていたり、崇拝者のような取り巻きがいたりする。
◆常習的にウソをつき、話を盛る。自分をよく見せようと、主張をコロコロと変える。
◆ビッグマウスだが飽きっぽく、物事を継続したり、最後までやり遂げることは苦手。
◆傲慢で尊大であり、批判されても折れない、懲りない。
◆つきあう人間がしばしば変わり、つきあいがなくなった相手のことを悪く言う。
◆人当たりはよいが、他者に対する共感性そのものが低い。
◆利益で人を誘導する。人は損得でしか動かないと信じている節がある。
◆人間・社会不信の発言をする。自分以外を信じていない。
サイコパス因子のモデル
- 口達者/表面的な魅力
- 誇大的な自己価値観
- 刺激を求める・退屈しやすい
- 虚言癖
- 人を操作する・偽り騙す傾向
- 良心の呵責・罪悪感の欠如
- 正直さの欠如・狡猾さ
- 薄い感情
- 共感性の欠如・冷淡である
- 寄生的生活様式
- 行動のコントロールができない
- 奔放な性衝動
- 幼少期の問題行動
- 現実的・長期的な目標の欠如
- 衝動的
- 無責任・自分の行動に対して責任が取れない
- 少年非行
- 多くの婚姻関係
- 仮釈放の取り消し
- 多種多様な犯罪歴
アメリカでの反社会性の診断基準(3つ以上)
- A1.法律にかなって規範に従うことができない、逮捕に値する行動
- A2.自己の利益のために人を騙す
- A3.衝動的で計画性がない
- A4.喧嘩や暴力を伴う易刺激性
- A5.自分や他人の安全を考えることができない
- A6.責任感がない
- A7.良心の呵責がない
サイコパスが多いと言われている職業
- 経営者
- 弁護士
- 政治家
- マスコミ関係
- 小売業者
- 外科医
- 警察官
- 聖職者
- 料理人
- 軍人
- 金融商品関係者
また、他にも次のような者にも多いとしている
- 犯罪者
- DV加害者
- 虐待者
- 非行少年グループ
- 薬物依存やギャンブル依存者
- 犯罪組織構成員
- テロリスト
- カルト教祖
- 金銭を得るためならなんでもやる人
サイコパス犯罪者の心理
他人の感情や状況を考える事なく、欲しいものを手に入れる・楽しむためにやるのが特徴です。
犯罪行為により(例えば、被害者の極限の恐怖の表情や叫び声、刺激による高揚感などで)機能不全の扁桃体がわずかに反応し、扁桃体の反応が麻薬のように快感として作用するのではないかとも考えられます。
依存症のように犯罪行為で得た快感を再び求めてしまう為、再犯率が高いのかもしれません。扁桃体が反応することで、生きている感覚を束の間だが少しだけ取り戻すといった事が推測されます。
サイコパスは記録を残す傾向がありますが、記録を使って思い出し、扁桃体の反応を、後でじっくり繰り返し味わうためでしょう。
記録を残すところに、犯罪することが目的でなく、自分自身への刺激のためというサイコパスの本質が見えます。
サイコパスの手口の例
①はじめに相手に貸しを作る。お金で困っていたらお金を、人脈で困っていたら人脈を提供する。頼まれなくても親切にする。
関係の初期段階では「この人はいい人だ」「自分を助けてくれて、本当にありがたい」と思わせる。
②ある程度の信頼関係ができたところで、脈絡なく、あるいは非常に些末なことでキレる。相手が下手に出て来たところで言いがかりや難癖をつけて「あんなによくしてあげたのに、どういうこと?」などと怒る。
普通の人は、恩のある人物から嫌われたくないので、自分が悪いわけではないと思っていても、たいていは謝罪をする。
③するとまた態度を豹変させ、謝罪を受け入れる。そして「そうやって素直に謝ることができるのは、あなただけですよ」などと、相手の自尊心をくすぐるような持ち上げ方をする。
サイコパスは、こういった事をごく自然に行います
アメとムチを繰り返し、被害者側の「嫌われたくない」という罰を回避する気持ち、「褒められたい」という欲望を巧妙に刺激し、借りがある人にはなにかお返しをしなければならないという「好意の返報性」を悪用することによって、上下関係を完成させていきます。
また、サイコパスを核として、健常者たちが集団を形成することがあります(カルト教団・会社・スポーツチームなど)
かなり極端な場合ですが、集団全体が暴力的になり、核のサイコパスが除かれると、周辺の健常者はたちまち正常に戻る場合が多いです。
対策
ミラーニューロンが活発な人は、サイコパスに利用され易い・影響を受けやすいです。
サイコパスの「寄生的ライフスタイル(他者の収入などを奪う形で生活をする)」に巻き込まれやすい傾向があります。
可能な限り関わらないことが1番の対策です。
もし難しい場合は、対象となる人物の特徴をよく理解して、割り切った同盟を組むのが良いそうです。
サイコパスはたくましく攻撃力があるので、共通の敵やビジネスの競合相手がいる場合には強い味方となるはずです。
- ウソがあると想定し、必ず発言の裏を取る
- 相手の良心に訴えても難しいと理解する
- どんな場合でもお金を貸さない
- 弱みになるような個人情報を渡さない
- 共通のメリットが生じる場合のみ同盟を組む
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