ミュージシャンが薬物依存になってしまうパターンが多いイメージはありませんか?
田代まさしさんが覚醒剤で4度目の逮捕となりました。最近だと、ASKAさん、ピエール瀧さんもそうです。他にも芸能人やスポーツ選手など、有名だからこそのリスク回避思考が働きそうなのにも関わらず、手を出してしまう人が多く見られます。
実は依存症には、物事に没頭しやすい日本人の気質が大きく関わっている事がわかりました。
依存症とは
特定の何かに心を奪われ、やめたくてもやめられない状態になる事です。繰り返してしまう、より強い刺激を求めてしまう、いつも頭から離れないといった症状が段々と出てきてしまいます。
依存物質をとる⇨快楽物質のドーパミンが放出⇨繰り返しその刺激を求める⇨依存症
日本人と依存症
◆アルコール依存症 230万人 女性は男性の1/4程だが、血中濃度が上がりやすくなりやすい (WHO調べ)
◆ギャンブル依存症 536万人 男性8.7% 女性1.8% 世界一多い国 (日経BPネット)
◆ニコチン依存症 1534万人 喫煙者数2569万人 男性39.3% 女性11.3% 男性は米国の2倍 (日経BPネット)
◆ネット依存症 270万人 男性はオンラインゲーム 女性はSNSに依存しやすい(日経BPネット)
他に、ゲーム依存症・睡眠薬や安定剤などの薬物依存症・買い物依存症・セックス依存症など合わせると3000万人を越すと言われています。
全体的に依存症は男性が多い傾向がわかります。前頭葉の働きが弱まっていることも要因の1つと考えられています。また、リスクを伴うギャンブル依存や、薬物依存はドーパミン遺伝子変異が関係していると推測されます。
依存症の世界各国 有病率
日本 | 4.8% |
マカオ | 6.0% |
オーストラリア | 3.9% |
シンガポール | 3.8% |
アメリカ | 3.2% |
ロルウェー | 1.1% |
韓国 | 0.9% |
イギリス | 0.9% |
ドイツ | 0.7% |
オランダ | 0.5% |
出所:2012THE POPULATION PREVALENCE OF PROBLEM GAMBLING
世界に比べ、日本の依存症の有病率が高い事がわかります。逆に同じアジア人である韓国は少ない事がわかります。マカオはカジノの存在が依存症に関与していると考えられます。
体質と依存症の関係
アルコール依存症になりやすい体質・・・お酒が強い、アルコール感受性が高い
ニコチン依存症になりやすい体質・・・・瞬きが少ない人 ニコチン代謝が低くニコチンが残りやすい
お酒で気持ちよく酔える、タバコを吸うと落ち着く、という人が依存症になりやすいです。
上の記事にもありますが、アルコール消費量と、日本特有の遺伝子である縄文人遺伝子の分布図が一致します。
ニコチン依存になりやすい体質である瞬きが少ない理由は、マイボーム腺による脂で目の膜がはられ、涙の蒸発が少ないからです。
マイボーム腺は皮脂腺同様、男性ホルモンによって働きが活発になります。
【男性喫煙率】
上の図は依存症ではないのですが、2007年男性喫煙率ランキングです。東側の喫煙率が圧倒的に高いのが分かります。
【女性喫煙率】
こちらは2013年女性喫煙率です。東側が高いのは男性と同じですが、日照時間が少ない日本海側は低く、太平洋側が高い事がわかります。女性40代一人暮らし率とも正の相関があります。
ニコチン代謝についてこんな研究結果がありました。
ニコチンには依存性があり,喫煙者は体内のニコチン濃度を一定に保とうとして喫煙する。体内に摂取されたニコチンがそのまま尿中に排泄されるのは10%程度であり,ニコチンの体内からの消失には肝臓における代謝が大きく寄与している。
日本人は欧米人や韓国人に比べてニコチン代謝能が低く,その要因として CYP2A6 欠損型および変異型の遺伝子頻度が高いことが大きい。
CYP2A6の発現はエストロゲン受容体,酸化ストレス応答転写因子 NF -E2 related factor 2,プレグナン X 受容体などの転写因子によって調節されている。
禁煙補助剤としてニコチンガムやニコチンパッチを使用する際,ニコチン代謝能が低いヒトではニコチンの血中濃度が高くなり,有害作用が現れる可能性があり,注意が必要である。
つまり、女性ホルモンのエストロゲン受容体が多いほど代謝が高くなり、ニコチンの消失も早くなり、依存的にはなりにくい。日本だと西の方がエストロゲン受容体が多そうですね。
CYP2A6多型だと代謝能が低く、血中のニコチン濃度が高くなり、それを一定に保とうと依存しやすく、さらに禁煙補助剤の有害作用が現れやすいということです。エストロゲン受容体が少ない人が依存しやすいという事でしょう。
また、ニコチンには男性ホルモンを女性ホルモンに変える「アロマターゼ」を抑制する作用があるそうです。
欧米人、韓国人の方が、日本人よりもエストロゲン(女性ホルモン)が多い事がわかりました。韓国と同じ東アジア人でもホルモン量が違うのは、遺伝子のルーツの違いかも知れませんね。
他の研究によりますと、アジア人女性での乳がん発生率の低さは、米国及び英国人女性と比較して40%の血清中エストロゲン濃度減少を伴うものであるそうです。
アジア女性に比べて、欧米人の女性の方が2倍近くエストロゲンが多いということですね。
◆使用者が依存症になる割合
ニコチン>ヘロイン>コカイン>アルコール>カフェイン
◆依存症になった人の禁断症状の強さ
アルコール>ヘロイン>ニコチン>コカイン>カフェイン
◆依存症の人がやめる難しさの度合い
コカイン=ヘロイン=アルコール=ニコチン>カフェイン
お酒やタバコは、コカインなどの麻薬と同じくらい依存度が高いです。依存してから半分の人々が依存を脱している期間は、ニコチンで26年、アルコールで14年です。
クリエイティブな人は依存症になりやすい
クリエイティブな人は、自制力など自己コントロールを司る前頭前野の活動が弱く、奇抜なアイデアが湧くなど想像力が高い一方で、自制心が働きにくくなっています。
また、セロトニン遺伝子変異を持っているため不安傾向が強かったり、ストレスを感じやすかったりします。その不安を紛らわせるために、依存症になってしまうリスクが高いと考えられます。
ドーパミンの快感や、不安からの開放感も強く依存になりやすい傾向もあります。
クリエイティブな人はセロトニン感受性が強い方も多く、働きにくい自制心や不安やストレスにも耐えられるくらい我慢強い一方で、ブレーキが外れた時の反動が強いです。
ミュージシャンや、芸能人は、依存する対象が手に入りやすい環境にあるというのも依存症の一因にあると思います。遺伝要因、精神的要因、環境要因などが重なり合い、依存症になると考えられます。
脳科学辞典によりますと、覚醒剤使用経験者の脳内セロトニントランスポーターの密度が健常者よりも低下しているそうです。その低下が、彼らの攻撃性の強さと相関している事が報告されているそうです。
薬物使用でセロトニントランスポーターが減ると、脳の分泌のブレーキが効かなくなります。過覚醒や高揚、幻覚症状、うつ状態など、些細なことで脳が暴走するようになり、いずれ廃人のようになってしまいます。
また、断薬後も数年の間は脳内活性ミクログリアの密度が健常者より上昇しており、この事が神経障害の継続に関連している可能性が示されているそうです。(活性したミクログリアは神経変性や中枢神経の炎症を引きおこします)覚醒剤は怖いですね。
管理人おすすめブログ 性ホルモンと脳について