認知症について

認知症

認知症いったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態。認知症は犬や猫などヒト以外でも発症する。

原因は、脳内にアミロイドβタンパクが過剰に溜まり、神経細胞が傷つき死滅していく事である。

最初に嗅神経の障害が起きる。

次に、嗅神経に近い海馬の萎縮による記憶障害が起き、見当識障害(時間・場所・人物がわからなくなる)、認知機能障害(計算能力の低下・判断力低下失語・失認・失行・実行機能障害)などが起こる。

これらは神経細胞の死滅によって発生する症状であり、患者全員に見られる。病気の進行とともに徐々に進行していく。

血糖値が異常に高いと脳内のアミロイドβタンパクの生産も増加することから、認知症は脳の糖尿病状態とも言われている。(しかし糖尿病の人には見られない脳の変化をしている)

2014年では、日本の認知症患者数は約500万人、社会的費用は14.5兆円と、国民医療費全体の3分の1を占めていると推計された(厚労省認知症対策総合研究事業)。また2035年には22.9兆円に膨らむ見込みとされる

軽度認知障害

軽度認知障害とは、正常老化過程で予想されるよりも認知機能が低下しているが、認知症とはいえない状態である。

認知症の前段階にあたり、記憶力、判断力、物事を順序立てて行う能力、言語能力などの認知機能の低下、物事の関心の喪失、依存傾向、怒りやすさなどが認められるが、日常生活には支障のない程度である。

「認知症」の診断ができる程度に進行するまで、通常5〜10年、平均で6〜7年かかる。2〜3割の人は健常な状態に戻る。

脳の血流の低下が原因の一つと言われている。

対策として、運動・睡眠・栄養で血流を増やし脳の機能を高めるとよい。

デュアルタスク(2つの課題を同時に行う)をするとさらに脳の機能が高まる。例えば、散歩しながら、計算をしたり、一人しりとりをするなど。30分以内の昼寝も効果的である。

アルツハイマー認知症

アルツハイマー病は、脳が萎縮していく病気である。女性に多い

初期だとMRIでも萎縮がはっきり見られない場合があるが、血流が停滞したり、アミロイドβが溜まっていたりする。

アルツハイマー型認知症は、認知機能低下、人格の変化を主な症状とする認知症の一種であり、認知症の60-70%を占める。

徐々に進行する点が特徴的であり、軽度認知症の段階を経て、認知症へと移行していく。

本質的な病変は神経細胞消失、老人斑(シミのようなもの)、神経原線維変化 である。

症状経過の途中で、被害妄想や幻覚(とくに幻視)が出現する場合もある。

暴言・暴力・徘徊・不潔行為などの問題行動(いわゆるBPSD)が見られることもあり、介護上、大きな困難を伴う。

大部分は65歳以上に発病するが、4-5%ほどは若年性アルツハイマー病としてそれ以前に発病する

65歳以上人口の約6%が罹患しており、2010年では認知症によって48.6万人が死亡している。先進国において、最も金銭的コストが高い疾患である

文部科学省科学技術政策研究所によれば、2030年までにアルツハイマー病の進行を阻止する技術が開発されるとしている。

インスリン点鼻薬が認知症に有効とされると示唆されている。

若年性認知症

65歳未満で発症する場合を、若年性認知症と呼ぶ。

発症の平均年齢は51歳。

脳梗塞や脳出血の後に起きる血管性認知症が40%、アルツハイマー病が25%、

交通事故の後などに起こる、脳部外傷後遺症が8%、特殊な前頭側頭型認知症が4%。

最近はレビー小体型認知症も増えている。

行動心理症状(BPSD)が高齢の場合よりも現れやすくなる。徐々に進行するというより、まとめて症状が出る事が多い。

血管性認知症

白質という経路の障害によって、情報がきちんと伝達されなくなる。

脳卒中による認知症・・・血管が詰まる→脳梗塞・血管が破れる→脳出血 これらにより脳の細胞がダメージを受けて壊死し、認知症になる。

脳症血管病・・・小さな梗塞が多発したり、小さい出血が多発することにより、認知症につながる。

  1. 以前はスムーズにできていた事が、段取り良くできなくなった
  2. 物忘れが多くなった(まだら的な物忘れ)
  3. 歩く、食べるなど、動作が全般的にゆっくりになった
  4. 活気がなくなった、言葉数が少なくなった
  5. 急に怒ったり泣いたり、笑い出したりするようになった

1・2・3は頻度が高く、4・5は血管性認知症の高い特徴。

前頭側頭型認知症

前頭葉、側頭葉が一定のルールで死滅していき、萎縮が見られる。

大きな特徴は、人格の急変。前頭葉は行動、感情・側頭葉は、言語聴覚などを司る。

初期では記憶力は正常で、反社会的行動を罪悪感を感じる事なく繰り返すようになる。

  1. 反社会的行動・・・万引きや羞恥心を示す行動を平気で行う、物事に無頼で無頓着になり人から注意を受けても耳を傾ける事がない。
  2. 食行動の異常・・・好きではなかった甘いものや、味付けの濃いものを好むようになる
  3. 影響されやすさ・・・目に入った文字(看板など)を1つ1つ声を出して読んだりする
  4. 繰り返し行動・・・決まった食事、同じ行動を繰り返すなどの常同行動も特徴である。『こする』行為を一日中飽きる事なくやり続ける。

レビー小体型認知症

脳の中に異常なタンパク質(レビー小体)の塊が現れることで起こる。アルツハイマーよりも進行が早い。

75歳以上に多くみられ、やや男性に多い

物忘れが軽い傾向があり、症状を自覚している人が多い。便秘や多汗といった自律神経症状が起きる。

後頭葉の血流が低下したり、ドーパミンの分泌が低下する特徴がある。

  1. 虫などが見える幻視
  2. 正常とぼんやりを繰り返す認知の障害
  3. つまずくなどの運動障害 パーキンソン症状がある
  4. レム睡眠時にうまく筋肉が緩まないため、睡眠中に大声を出したり手足を動かす
  5. うつ症状(前頭葉の機能障害と関係する)

アルツハイマー 脳の変化

1,内側側頭葉(海馬)病変・・・近時記憶障害(直前のことを忘れる)、時間の見当識障害で発症する。ストレスを減らすブレーキ機能が弱まり、脳が興奮した状態が続く。

2,側頭頭頂葉連合野前頭連合野の障害・・・高次機能障害、実行機能障害、健忘失語(語健忘、失名辞)

◆名詞が出てこないため「あれ、それ」といった代名詞ばかりの会話や関連のない話題の繰り返しなどが多くなり、話も回りくどくなる。

◆失行(時計描画試験で平面図形が描けない構成失行や、着衣失行の他、リモコンを使えない、お湯をわかせない、ATMを使えない)

◆失認(視空間失認で迷子になる、血縁関係を間違える、左右を間違える)

◆実行機能障害(献立を考えて必要な食材を買い複数の料理を作る、電話で用件を聞きメモをとって課題を実行する、お金を振込むなどの機能障害)

◆仕事や社会生活、家事を円滑に遂行できなくなり自立困難となり、要介護となっていく。

◆周囲への無関心さが目立ち、昼夜逆転、幻覚、被害妄想(もの盗られ妄想)、異常な食行動、不安感、焦燥感、徘徊、暴力(噛みつく)、性的羞恥心の低下といったBPSD(行動・心理障害)も伴うことが多くなる。

BPSDは環境要因(ストレスの多い環境)の影響を受けることが多い。

ストレスホルモンのコルチゾール が多いと出やすくなる。愛情のある触れ合いによりストレスを軽減させる事ができる。

3,広範な大脳皮質の障害・・・判断力が高度に低下、人格の変化、コミュニケーション不良、失外套症候群(大脳皮質の機能が完全に失われた状態)、まれにてんかんの合併。最終的には寝たきりになる。

『大脳の大まかな区分と役割』

前頭葉

意志や行動、創造性を司り、行動の指令を出す。

頭頂葉

空間や左右の認識、熱さや冷たさなどの皮膚感覚を司る。

後頭葉

視覚を司り、見たものが何かを認識する。

側頭葉

嗅覚、聴覚、言葉の理解を司る。

海馬

側頭葉の内側にあり、一時的に記憶を保管する。アルツハイマー病の場合、最初に障害を受ける。

認知症のいろいろ

◆睡眠との関係が示唆されている。アルツハイマー病の原因として、脳内でのアミロイドベータ (Aβ) の蓄積が考えられているが、アメリカワシントン大学などの研究チームが、2009年に行ったマウスを使った実験で、次の結果を明らかにした。

  1. 睡眠中Aβが減少し、起床中に蓄積する。
  2. 睡眠時間の短いマウスはAβの蓄積が進行し、不眠症改善薬を与えると改善した。

◆嗅神経の再生力は高く、アロマテラピーは認知症予防につながる。昼は、ローズマリーカンファーとレモン。夜はラベンダーとスイートオレンジの組み合わせが良い。

◆運動はアルツハイマー病を減少させるのに有望な方法である。運動は体内で、インスリンの効率良い代謝を促す。

インスリンは、アミロイドβから脳を守り、ニューロンと記憶の形成のつながりを改善するとされる。

◆適量の飲酒は認知症予防の効果がある。アルコールには女性ホルモンを増やす作用がある。ホップに含まれているイソa酸はサイトカインをほぼ放出させずにアミロイドβを消化するミクログリアを活性化させる効果がある。脳血流を増やし、老人斑も減少させる。

食習慣:魚(EPA・DHAなどの脂肪酸)の摂取、野菜果物(ビタミンE・ビタミンC・βカロテンなど)の摂取、赤ワイン(ポリフェノール)の摂取などが認知症の発症を抑えることが分かっている。

1日に1回以上魚を食べている人に比べ、ほとんど魚を食べない人は本症の危険が約5倍であるというデータがある。米国の加齢研究所は「精製された炭水化物(例えば白い砂糖)は問題を起こす可能性がある」と述べている。

◆大豆製品のイソフラボンは女性ホルモンを増やし、認知症予防になる。海藻類のミネラルは動脈硬化を予防し、脳卒中による認知症を防ぐ可能性がある。牛乳、乳製品も認知症予防に良い。

◆アルツハイマーの予防にセラミドが有効である。Aβは「エクソソーム」と呼ばれる細胞外小胞と結合することによって分解除去され、こんにゃく芋に含まれる脂質成分の『セラミド』がエクソソームの分泌を促進する作用をもつ。植物由来のセラミドは肌を外部刺激から守る機能があるとされる機能性食品素材で、美肌目的のサプリメントや飲料によく利用されている。

◆大量の飲酒、うつ病、学歴の低さは、認知症の危険因子である。大量飲酒をしてしまう衝動性が高いタイプがなりやすいとも言える。

◆町内会やボランティア活動に積極的な高齢者は、そうでない高齢者より認知症になる可能性が25%も低い。なりにくい人はそういう活動が好きなタイプとも言える。

◆ビタミンD不足で、認知症になるリスクは2.3倍に、アルツハイマー病のリスクは2.5倍に、脳卒中のリスクは2.0倍に増加する。

◆アメリカ・バーモント大学の研究者が30,000人以上を平均3.4年追跡したところAB型は認知症との関連が見られた。

O型以外がなりやすい可能性があり、心臓疾患や糖尿病、高血圧との関りから認知症になりやすくなっているような可能性も考えられる。

関係するFVIIIの体内濃度は、AB型>B型>A型>O型の順である。

◆難聴を有する成人はそうでない成人に比べて、認知症およびアルツハイマー病を発症するリスクが高く、難聴が重度であるほどリスクも高いことを突き止めた。

◆酒さは認知症、特にアルツハイマー型と有意な関連を示した。

◆高血圧・糖尿病・喫煙・高コレステロール血症などが、脳血管型やアルツハイマー型などの本症の危険因子となる。

◆糖尿病の人は認知症のリスクが2倍である。

◆血圧降下剤による薬害

◆片親が認知症の場合、本人が発症する危険は10〜30%上昇する。特に、片親が早期発症のアルツハイマー型認知症の場合、本人発症の危険はかなり高くなる(例えば親の発症が50代前半なら、本人発症の危険は約20倍)。

◆ダウン症患者はアルツハイマー病を発症するリスクが6倍ほど高く、病理変化が30代ころから出現し年齢を重ねると共に進行する。65歳以上の75%がアルツハイマー病を発症している。

21番目の染色体が1本多く、この染色体にはアミロイドβを形成する遺伝子が含まれている。早期に発症するのは、アミロイドの過剰形成の可能性があると言われている。

◆知的障害者は、認知症を発症するリスクが異例に高く、40代後半から50代でピークを迎える。中程度から重度だと、高血圧、高血糖、高コレステロールを抱えることがリスク要因でもある。

◆アルツハイマー病に関わる脳の変化は、高い遺伝子リスクを抱えた人では、早ければ幼少期に確認できる事が報告されている。それは発達障害であるとの新説もある。

◆年齢が最大の危険因子である(特にアルツハイマー型)ことが知られている。認知症全体の発症率が85歳まではゆっくり上昇し、85歳を越えると急激に上昇する、というデータが得られている。

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