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脳番地トレーニング① 脳はいくつになっても成長する

発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家である、医学博士の加藤俊則さんが提唱する「脳番地トレーニング」から、脳の使い方や、自分の脳の得意・不得意を探ってみましょう。

脳の発達は一生続く

脳は、20歳前後までは記憶力もよく、新しい物事を吸収するには適した時期です。しかし、人間関係を円滑に進める能力や、社会に貢献する柔軟な思考力や、創造力などの高度な脳の働きは、20代はまだまだ成長過程にあります。

脳の形成は子どもの頃には急速に進みますが、脳の発達は一生続いていきます。脳画像で見られる脳の枝ぶりは、脳に刺激や経験を与えて初めて成長します。太くて多いところはよく使われていて発達しているところです。

上記の画像は、目で見て集めた情報を分析することや、状況把握をしたり、グラフや画像を理解することが苦手だった人が、1年半でその脳番地を成長させた事例です。刺激や経験を与えることを習慣化(トレーニング)すれば、大人でも発達していくのです。

脳は使わなければ衰えていき、認知症にもつながっていきます。筋肉のように、鍛えると変化していきます。特に高度な機能の思考感情は思春期後も発達が顕著です。

苦労することが多かった人は、いろいろなバリエーションの感情を経験しているため、知らず知らずのうちに脳番地が強くなっていると考えられます。

脳番地とは

脳番地には8つの番地があります。

  • 思考系脳番地・・・思考や判断に関係する脳番地
  • 感情系脳番地・・・感性や社会性に関係する脳番地
  • 伝達系脳番地・・・話したり伝えることに関係する脳番地
  • 運動系脳番地・・・体を動かすことに関係する脳番地
  • 聴覚系脳番地・・・耳で聞くことに関係する脳番地
  • 視覚系脳番地・・・目で見ることに関係する脳番地
  • 理解系脳番地・・・物事や言葉を理解するのに関係する脳番地
  • 記憶系脳番地・・・覚えたり思い出すことに関係する脳番地

脳全体の中で、それぞれの脳番地の位置関係を見てみると、

脳の前方に位置する「前頭葉(ぜんとうよう)」には、思考系脳番地、感情系脳番地、伝達系脳番地、運動系脳番地が分布しています。

すなわち、主に情報を発信する“アウトプット”に関わる働きをする脳番地です。目的や意思に基づいて「~したい」という自発的な考えや行動を促します。

一方、前頭葉以外の後方に位置する脳の場所には、聴覚系脳番地、視覚系脳番地、
理解系脳番地、記憶系脳番地が分布しています。それに感情系脳番地を加えたもの。

これらは、主に情報を取り入れて処理をする“インプット”に関わる脳番地です。考えや行動を起こすための情報を収集する脳番地で、受容的な傾向にあります

感情系脳番地は情報のアウトプットとインプットの両方に関わっています。

脳をどう使いこなすかによって、自発的な人間になるか、受容的な人間になるかが決まるといっても過言ではありません。

後ろの脳で情報を取り入れ、前方の脳で情報をアウトプットする。このように、脳番地を知ることによって、右脳・左脳だけでなく、脳の前後の動きも考えた脳の活かし方を実践できるようになります。

それぞれの脳番地

脳の成長は育つ旬と順序(五感・記憶思考・理解知識)があります。育つ順序は、後ろから前というイメージです。それぞれの脳番地の育ち方は一人の脳でも様々です。脳番地の未熟さは、過敏性無反応の両極端に分かれます。

運動系と感覚系の脳番地

運動系・・・身体のあらゆる部分を動かしたり力を出したりする脳番地です。全身運動だけでなく、手先の細かい動き体を動かすリズムやタイミング方角や角度の制御を行っています。

感覚系・・・皮膚刺激体性感覚を処理する脳番地です。温覚、圧覚、痛覚、皮膚刺激、深部感覚(筋肉や内臓の感覚)、前庭感覚(重心や姿勢の感覚)などです。

これら2つの脳番地は連携が強く、自分の感覚に合わせて身体の動きを調整したり、動きをフィードバックして感じたりすることができます。

※なお、感覚系は感情系と密接な関係にあるため、8つの脳番地に分けた時は「感情系脳番地」に含めています。

特徴

運動系と感覚系は脳の中心に位置しており、脳の発達には欠かせない存在です。移動ができると認知能力が伸び、寝たきりになると認知機能が急激に低下します。

発達の旬

胎児期の後半から始まる。感覚系は母子のスキンシップを中心に早くから育っていきます。子供のうちにしっかり運動することで、運動系、感覚系がともに育っていきます。

視覚系脳番地

頭の後ろにある視覚系・・・受動的にありのままを見る。明暗→色→輪郭→奥行

脳の前側にある視覚系・・・能動的に見たいものを見る。眼球運動に関与している

特徴

理解系や、運動系と強いネットワークがあります。

視覚系ー理解系・・・見たものを分析して理解する。文字を読んだり、状況を把握したり、空間認知をしたりすることができる。

視覚系ー運動系・・・運動能力を支える役割。スポーツなどで視覚分析する。

発達の旬

見ることは生後1ヶ月から活発。身体を動かして移動ができるようようになったり、箸や鉛筆といった技巧的な動きをマスターしながら、さらに高度になっていきます。

屋内より、屋外の雲や海や植物のような変化する自然は、発達に良い栄養になります。外の光を浴びると近視も抑制されます(日光と近視はこちらの記事で)。

聴覚系脳番地

耳で聞いて情報を処理する脳番地です。言葉以外の音に注意を向けて分析する脳番地と、声や言葉を分析する脳番地に分けられます。

特徴

言葉の理解を担当する理解系と、発話を担当する伝達系、聞いたことを記憶する記憶系とネットワークが強いです。

聴覚系の発達が良いと、言語能力も高くなる傾向があります。

聴覚系ー記憶系がしっかり形成されれば、知識のスムーズな習得につながります。

発達の旬

生後1〜2ヶ月から活発になります。女児の方が育ちが良い傾向があります。男児は低学年のうちは聴覚が苦手な場合が多い傾向にあり、言葉の発達も比べると遅れることが多いです。

記憶系脳番地

知覚した情報や知識を覚えたり、体験したことを思い出したりする脳番地です。

人の名前や言葉を覚える言語性記憶と、人の顔や場面などの非言語性記憶があります。地理記憶に関わる部分もあります。

特徴

触れた情報の全てを記憶するのではなく、重要な情報を選別して記憶するため、興味があること、理解していること、情動が伴う体験、繰り返した体験などが優先的に記憶されます。

過去や現在の情報のみでなく、未来の展望にも大きく関係し、予見の見通し時間感覚にも関係しています。

発達の旬

生後1年を過ぎた頃から始まりますが、本格的な発達は3〜4歳から20歳頃です。記憶することが習慣化されている人は、50歳以降でも記憶系の衰えが少なくなります。

理解系脳番地

知覚した複数の情報を集めて、その意味を把握する脳番地です。五感が集まって、統合される場所で「感覚交流の場」のような役割をしています。

特徴

左脳と右脳の機能が大きく異なります。

左脳・・・高度な分析力や理解力がある左脳は、見聞きした言語の理解文字の習得だけでなく、言葉の概念や定義にも関わってきます。

右脳・・・言葉以外の情報の理解に関わり、図形認識の理解、空間や体感の把握、俯瞰した物の見方や、全体像の把握、空気を読む力の基礎になる状況把握も担当しています。

発達の旬

言葉による左脳の旬よりも、体験的な理解の右脳の旬が先に訪れます。9〜10歳前後で左脳が右脳を追い越すと、体験しなくても言葉を通して物事の理解が可能になります。

左脳が育った後は、体験より言葉に依存しやすくなるため、低年齢のうちは非言語体験を積み重ねて、理解系の基礎を作っていくことが大切です

理解系は50歳以降もゆっくりと努力次第で発達が進みます。特に高度な理解に関わる部分は、成人以降の方が発達しやすくなります。

伝達系脳番地

声を出したり、話したり、書いたり、主に言葉をアウトプットするための脳番地です。言葉を理解する理解系とネットワークが強いです。

伝達が発達ー理解が苦手・・・よく喋るのにあまり分かってない

伝達が苦手ー理解が発達・・・分かっているけどうまく喋れない

特徴

声に出すことだけでなく、声に出さない内言機能も持っています。内言機能は自分の思考を整理したり、行動を制御したりするのに役立ちます。

短期記憶ワーキングメモリの一端を担っていて、情報を思い浮かべて整理することにも関わっています。

左脳・・・文法の処理、いくつかの言葉の情報を並べて保持する

右脳・・・場面や映像を思い浮かべる

発達の旬

理解系が発達し始めた後に、本格的に発達します。経験とともにゆっくりと育っていきますが、通常は10〜20歳代でよく伸びる番地です。それ以降は理解系に応じて発達が進んでいきます。

感情系脳番地

入力と出力の働きがあるため、知覚情報に対して感情が反応する働き(入力)や、情動の生成と表出(出力)を担当します。

扁桃体や前頭葉の社会性に関わる部位があり、個人的な情動の変化だけでなく、罪悪感などの社会的な評価や価値観とも関わってきます。

特徴

感覚系の発達とも関連しています。皮膚感覚に過敏性があったり、心地よさを感じられない場合には感情の発達も伸び悩む傾向にあります。

脳が成熟すると、思考や理解の根拠は感情系だけでなく、理解系に移行して、より高度な判断を下すようになります。

発達の旬

感情系の発達は2段階あります。

1段階目・・・生後から数年間の感覚系が旬にある時期

2段階目・・・より高次な感情系が発達する成人以降の時期

どちらの旬でも、葛藤を経験し乗り越えることで、さらなる成長へとつながります。

思考系脳番地

最も高次な働きをする脳番地です。考えたり、判断したり、他の番地に指令を出したり、「あれをしたい、これをしたい」という意欲や、集中力や忍耐力とも関連し、多様な機能を担う司令塔の役割をしています。

特徴

左脳が育つと・・・言語情報の分析や処理が得意な傾向(論理的に見える)、自己主張が強く、言葉による説得力があり、枠にそった思考を展開します。

右脳が育つと・・・外界の情報を取り込む操作が得意な傾向(直感的に見える)、周囲と同調したり、他者の意見を受け入れ、柔軟性や包容力に富み、枠にとらわれず、全体像やニュアンスの展開を図ります。

発達の旬

旬が遅い番地です。考えたり、判断するためには、その材料となる知覚や理解など情報処理の充実が必要なため、それらの発達を追うようにして発達していきます。

通常は中学生後半くらいから思考力が育ち、自分をモニターする力や、自己客観力が備わってきます。

得意な脳番地と苦手な脳番地を知ることで、より自分を理解できるのではないでしょうか。「脳番地」についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ加藤先生の著書をお読みください。

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次回は、発達障害に関わる「海馬回旋遅滞」が脳番地に及ぼす影響をまとめていきたいと思います。

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