デザイナーベビーと映画監督が見る未来

「ゲノム編集して妊娠禁止へ」というニュースが発表されました。日本政府は禁止へ向けて法律や指針づくりを進めるそうです。

ゲノム編集は、遺伝性の病気治療の可能性もある一方、人為的に容姿や能力を変えるデザイナーベビーへの懸念もあるようです。

ゲノム編集技術で受精卵の遺伝子を変えて子宮に戻すことは、安全性が担保されておらず、世代を超えて影響が出る可能性があると指摘しています。

2013年、米国の遺伝子解析サービス会社が、両親の唾液などに含まれるわずかな遺伝子情報を解析して、生まれてくる子供の病気のリスクや容姿、芸術・スポーツなど適性や才能など、遺伝的な形質を予測する手法の特許を取得しました。

望ましい特徴を持つ子どもを生む「デザイナーベビー」につながりかねず、倫理的に問題があるとの議論が、欧米で起こりました。

両親の遺伝子が分かれば、まだ生まれていない子供の遺伝子もおおよそ予測がつくということは、サービスを利用して「確実に望ましい遺伝子の子供を得る為に、相手を選ぶ」といった事が起こりうるということでしょう。

もし、デザイナーベビーを良しとしてしまえば、多様性がなくなることは確実で、ゆっくりと滅んでいくのかもしれません。

1997年にアメリカで公開された映画「ガタカ」は遺伝子操作により、優れた知能と体力と外見を持った「適正者」が数多く存在する近未来を描いています。

ニュースにもあったゲノム編集されたデザイナーベビーが、当たり前に存在する世界というストーリーです。

ガタカの世界では、人が生まれたとき、寿命・将来かかる病気についてまで遺伝子分析により解析されます。

そこで、遺伝子検査をし、劣勢遺伝子を排除して「適正者」の赤ちゃんを人工的に生み出す方法が一般化していました。

約20年前にこのような未来を見ていた、アンドリュー・ニコル監督には驚かされます。未来を見つめる監督のその他の作品を探ってみたいと思います。

ニコル監督が手掛けた作品

  • ガタカ Gattaca (1997) 監督・脚本
  • トゥルーマン・ショー The Truman Show (1998) 脚本
  • シモーヌ S1m0ne (2002) 監督・脚本・製作
  • ターミナル The Terminal (2004) 原案・製作総指揮
  • ロード・オブ・ウォー Lord of War (2005) 監督・脚本・製作
  • TIME/ タイム In Time (2011) 監督・脚本・製作
  • ザ・ホスト 美しき侵略者 The Host (2013) 監督・脚本
  • ドローン・オブ・ウォー Good Kill (2015) 監督・製作・脚本
  • ANON アノン Anon (2018) 監督・脚本・製作

トゥルーマン・ショー

離島に住む、一度も島から出たことのない明るい青年が主人公。彼の人生は全てそのままリアリティ番組『トゥルーマン・ショー』として世界220か国に放送されていました。

彼の住む街は巨大なセットで、太陽や月、星々も機械仕掛けの照明装置に過ぎず、雨や雷鳴などの気象も人為的なものであり、そして何よりトゥルーマン以外の人物は全て俳優なのでした。

他人の人生を無責任に消費する人たち、気づかずに操られている主人公という狂気をコメディーたっぷりに描いています。

シモーヌ

落ち目の映画監督が、わがまま女優に暴言を吐き、契約を解除された。失意の中、コンピューターエンジニアからCGで作られた理想の女優を渡された監督は、CG女優を使って映画を完成させ大ヒットさせました。

実在しない女優が大人気となったことから、監督はCG女優が実在するように見せるための偽装をし始めますが・・・

現実と虚構の曖昧さ。理想だらけの虚構がもたらすものが分かるかもしれません。

ターミナル

旅行中に突然、自分の言語も全く通じない異国の空港で過ごさざるを得なくなった主人公の姿と周りの人々の交流を描いたヒューマンドラマ。

決してあきらめず、密入国することもなく、空港で生き続けていく彼の姿に、最初は邪険に扱っていた空港内の職員たちも次第に理解を示していきます。

ロード・オブ・ウォー

複数の武器商人への取材を元に作られた、ノンフィクションに基づくフィクション映画。副題は「史上最強の武器商人と呼ばれた男」。

ある日銃撃戦に遭遇した主人公は、衝撃を受け武器商人の道へ。営業センスがあると気づき開業し物語は始まります。

国ぐるみで武器通商による利益を得ている事、国連の常任理事国が武器輸出額の90%を占めている事実。正義の矛盾が表れています。

TIME/ タイム

科学の進歩で人類は遺伝子操作され25歳から年を取らなくなる未来の話。しかし寿命は存在し、残り時間が腕に表示されます。

寿命は機械でチャージするか、人同士で分け与えることができるのです。そして寿命が通貨の役割を果たします。

命の格差が広がるこの世界の真相を知った主人公は、このシステムを破壊する事を決意するのですが・・・

時間が価値になっている世界でも格差社会は存在し、強者は思い通りに世界を支配しようとしています。若さを維持した、終わりなき世界は果たして幸せなのでしょうか。

ザ・ホスト 美しき侵略者

そう遠くない未来。地球は知的地球外生命体“ソウル”に侵略され、人類は滅亡の危機を迎えていました。

人間の身体をのっとり、平和に暮らす“ソウル”たち。一方、逆襲の機会をうかがいつつ、地球の果てで逃亡生活を送るわずかな人類たち。地球外生命体 VS 人類。

ドローン・オブ・ウォー

これまでの戦争映画とは違い、臨場感みなぎるバトル・アクションも戦場に駆り出された兵士たちの決死のサバイバル描写も一切ありません。

安全な場所からドローン(無人戦闘機)を操作して空爆を行う現代の戦争の実体と、戦地に行かずしてPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しめられるドローン操縦士の異常な日常をリアルに描いています。

ゲーム感覚で人を殺せる無慈悲な現代の戦争の姿を見る事ができます。

ドローンと言っても、小型のものではありません。立派な軍事用の無人機です。

上空3000mからの広角と、個人の表情が識別できるレンズのズーム。相手は偵察されている事も、いつ爆弾が落ちるのかも気づかない。

発射してから10秒程度で着弾。eスポーツが台頭しだしたのも、戦いの方法が変化したからなのでしょうか。

ANON アノン

プライバシーの無い近未来。人々はインプラントを仕込まれ、”マインズ・アイ”と呼ばれる情報網からあらゆる個人や物体の情報を得る事ができる時代を生きていました。
警察機関は膨大なデータベースからすぐに個人の見たものをデータとして特定し、犯罪を検知・検挙していて、犯罪がなくなった代わりにプライバシーもなくなりました。
しかし、ある一連の殺人事件の犯人が分からず難航していきます。

近年、北欧スウェーデンでは体内へのマイクロチップ インプラントの埋め込みが実際に広がっています。世界にも広がっていくのでしょうか。

アンドリュー・ニコル監督のアイデアは、とてもユニークです。

ブラックユーモアがあり、現実と虚構、コメディと狂気、人間の矛盾、現在と未来、いろいろな相反を持った視点です。

興味があれば、ぜひみてみてください。

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