HSP 人一倍敏感な人たち (HSC)
HSPとはHighly Sensitive Personの略で、生まれつき刺激に敏感な性質を持つ人です。人口の15~20%を占める個性の一つでもあります。
HSC(Highly Sensitive Child)は、ひといちばい敏感な子供の略です。
HSPの70%は慎重で内向的であるのに対し、残りの30%は外向的であることから、敏感で繊細な人=内向的な人という訳ではありません。
HSPは生まれつき右脳活動が活発であり、感受性遺伝子を持つとされています。
そのうちの1つはセロトニンに関する遺伝的変異で差次感受性(わずかな差に気付く力)をもたらします。
セロトニンを運び去る効率が悪く、感情を伝達する神経伝達物質が一箇所に長い時間留まりやすい。つまり、良い感情も悪い感情も強く感じやすくなります。
もう1つの感受性の遺伝子は、意欲や注意などに関わる脳内の神経伝達物質ドーパミンに関わる遺伝子といわれています。
HSPの人の才能の大半は手続き記憶と解離の強さによるものであり、HSPの人が抱える問題の大半もまたそうです。
HSPには以下の4つの要素があり、どれか一つでも欠けていたらHSPではありません。
HSP 4つの要素
・深く処理する
「一を聞いて十を知る」ちょっとした刺激や情報から、深く受け止めて物事を徹底的に処理し、理解していきます。
この「深く処理する」という性質は、年齢以上に大人びた受け答えをしたり、初めて経験する場所や人の前で行動するまでに時間がかかったりという行動にも現れます。
場の空気を読み取って行動する能力に優れているということです。
・過剰に刺激を受けやすい
自分の内外で起こっていることに人一倍よく気がつき、処理し、配慮するので、精神的にかなりの負担がかかり、疲れやすく感じます。
強い明るさ、大きな音、手触り肌触り、匂い、暑さ寒さなどからも、普通以上のストレスを受けたり、疲れや痛みも通常より強く感じてしまう傾向があります。
刺激を過剰に受けすぎる性質は、特に子どもの不登校の原因と一つとされる慢性疲労症候群と密接に関係していると思われます。学校という集団行動において、普通の子以上に刺激を受けすぎてしまうのです。
・感情反応が強く、共感力が高い
人の心を読み取る能力に長けていて、適切な配慮や気配りをすることができます。
本を読むときには物語の登場人物に深く感情移入し、相手が人間でなくても、動物やロボットや物にさえ、強い感情移入を示します。ときには、物語の内容や、テレビのストーリーにも深く共感して、涙もろくなってしまうこともあります。
このような他人への関心や共感性の強さは、子ども時代に空想の友だち現象(イマジナリーフレンド)として現れることもあります。
・ささいな刺激を察知する
繊細で感受性が強いため、小さな音、かすかな匂い、ちょっとした変化など、細かいことによく気がつきます。(差次感受性から)
HSPの特徴
・生まれつき右脳の電気的活動が活発。
・生まれてすぐは右脳優位だが、成長とともに左脳の言語機能や思考力もじゅうぶんに発達する。創造性を発揮する際は右脳と左脳両方を使用する。
・ささいな事に気づき、良心的である為慢性疲労症候群に繋がってしまうことがある。また、セロトニンとドーパミンの遺伝子変異を持つHSPとHSSを併せ持つ人は、慎重と好奇心の板挟みになり、まるでアクセルとブレーキを同時に踏む様な感覚を持ち、それが慢性疲労症候群へと繋がる。
・生まれつき右脳が活発なHSPの子は人生最初の手続き記憶(長期記憶の一種で技能や行動が保持される)である愛着の影響を強く受ける。またその後の人生でも手続き学習しやすい。良い環境下では普通以上の恩恵を受けるが、トラウマなど悪い状況なども手続き記憶で体が覚えてしまうことがある。
・HSPの子はトラウマに直面すると 解離の凍りつき・麻痺といった反応を示しやすい。また、知らずしらずのうちにさまざまな解離症状を経験する。からだの動きがぎこちなくなる子もいる。解離が強くなりすぎて慢性的になると感情が失われ、現実感を喪失し、ひどい場合は人格が多重化していってしまう。
・解釈システム(他の情報と繋ぎ合わせ解釈して受けとる)により過去の記憶が改変されていく。
・脳の島皮質が活発な為、人一倍身体の内外の感覚を意識している。また、感受性遺伝子を持つ為、些細な変化に敏感である。
・差次感受性により、自らの行動や思考を分析し問題点をみつけ修正し克服できる為、脳の可塑性(適応するように変化させる)を引き出すことができる。そのため自らの問題やトラウマも克服することができる。
これらの特徴から次のような性格傾向が見られます。
HSPの性格
・迫りくる危険をいち早く察知する。
・結果がどうなるかじっくり考える。洞察力と先見の明。
・細かい事を観察し、情報を徹底的に処理してから行動する。鋭い観察力と思考力。
・慎重である。
・違いに気付き、
・静かな作業環境や綿密なスケジュールを好む。
・質を落とさない。
・直感が鋭く創造性豊か。
・刺激を避けようとする、刺激に弱い。
・規則正しさに安心する。
・誠実で公平さを大切にし、人の気持ちをよく考える。精神的にも肉体的にも圧倒されやすく傷つきやすいところがある。
HSPと防衛的悲観主義
4つのタイプの中で、HSPは⑶防衛的悲観主義
■楽観主義の2つのタイプ
(1)方略的楽観主義…行動につながる楽観主義
(2)非現実的楽観主義…行動につながらない楽観主義
■悲観主義の2つのタイプ
(3)防衛的悲観主義…行動につながる悲観主義
(4)一般的悲観主義…行動につながらない悲観主義
防衛的悲観主義とは、暗い将来を思い描き、自分の努力次第でその結末を変えられるという一見ネガティブだが、それを回避する行動をとろうとする思考。
浅い表面的な理解では不安になってしまい、深く掘り下げて納得しないと安心できないのは、HSPの特徴でもあります。深く考えて、最善の行動を取ろうとするのです。
生まれつき深く考えるHSPの人たちは、非HSPからの「考えすぎだよ」というアドバイスにまどわされて、非HSPの人たちと同じように考えようとすると うまくいかなくなる、ということです。
とりわけ、防衛的悲観主義のネガティブ思考は、とくに不安を強く感じるような特定の場面でのみ顔を出します。
それ以外の場面では、防衛的悲観主義者もあまり悩むことなく、日々を快適に過ごしています。自分にとってどれだけ重要な出来事かという重要度によって、防衛的悲観主義を用いる場面を選択していると考えられます。
防衛的悲観主義の人たちは、ネガティブだとは到底みなせないほどの積極性を持ち合わせてもいます。
間違われやすいHSPとASDとの違い
脳の島皮質の・・・活動が活発HSP/活動が低下ASD
■HSPでは島皮質が活発で、それゆえに「自分の内や外で起こっていることを、人よりよくわかっている」、つまり周囲の物ごとに敏感に反応している可能性があります。
■ASDは脳の島皮質が弱い為、脳は次に来るかもしれない刺激に備えることができないので、毎回、不意に新しい刺激にさらされるかのように感じます。
脳のフィルター機能
■HSPは脳フィルターの目が細かいため、感覚情報を濾し取るのに時間がかかり、「深く処理する」そして「一を聞いて十を知る」ことができます。悪い面は、「一を聞いて十を知る」が的外れな場合です。相手の気持ちを先読みしすぎて過剰に気配りしてしまったり、言葉の裏の裏を読んで、他の人の厚意に隠れた動機があるのではないか、と疑ってしまったりするかもしれません。
■ASDは要らない感覚をフィルターで濾過(ろか)することが難しい為、
「身体の内部と外部双方からの圧倒的な連続攻撃として経験する」刺激の多い場所に行くと、騒音が脳に突き刺さったりするような「感覚飽和」を起こし、メルトダウンとも呼ばれるパニック状態に陥ることがあります。また、そのままの情報で受け取るので「婉曲表現や皮肉を理解する、秘密を守る、顔色を読む」ことの苦手さがありますが、疑うことなく受け入れる純粋さだということもできます。アスペルガー症候群の人たちは、裏表がありません。
芸術など創造性の違い
■HSPの人たちはさまざまな情報をうまく混ぜ合わせ、自由奔放な比喩などをつかい加工する創造性です。解釈システムにより、トップダウンの思考方法である為、全体をおおまかに見渡して、だいたいの意味を抽出するという情報処理を用いた作風です。
■ASDの人たちの作風の特徴は、膨大な知識から編み合わされるコラージュ的な要素を持っているとされています。年月が経過しても記憶がかなり正確であると言われています。感覚システムにより、記憶が加工されにくいので、正確な記憶による語呂あわせやコラージュができます。ボトムアップ型の作風です。
どちらが良いというわけではなく、どちらにも一長一短があります。自分の特性を見極めて、能力を活かせるより良い選択をしていくことが大切です。
リンク
管理人おすすめブログ 性ホルモンと脳について