LD(学習障害)とは
知的な遅れはないのに、学校での勉強が難しい子どもたちのことを指します。
「計算はできるが教科書は読めない」「話すことはできるが聞くのが難しい」など悩みはさまざまです。
日本では4.5%の子どもにLDが見られるそうです。つまり、30人のクラスに1人か2人ずついる計算になります。
「障害」という言葉からネガティブな印象を受けがちですが、もとの英語のDisabulityは単に「ある能力が欠けている」という意味の単語にすぎません。
ある子どもは、耳が聴こえないわけではないものの、聴覚が不器用なために、より多くの情報を視覚から得るかもしれません。すると、学校の授業で、先生の話を聞いて理解するのが難しくなります。
別の子どもは、視力が悪いわけではないものの、目から入る情報を処理するのが苦手かもしれません。そうすると、教科書の文字を読むスピードが遅く、周りについていけないかもしれません。
こうした認知の偏りは、すべての子どもに見られますが、それが特に強く出ているために、みんなと足並みをそろえるのが難しい子が、学習障害(LD)と呼ばれているのです。
もちろん、これは親の育て方が原因ではありません。
LDの子どもたちは、苦手なことも多い反面、得意なことでは普通以上の強みを発揮できるケースも多いです。
聴覚の認知が悪く、授業についていけない子どもでも、図や絵を用いて目から教えれば、驚くほど飲み込みがよかったりします。
一人ひとりに合った方法を用いれば、得意な能力を伸ばして活躍することもできます。
LDは発達障害の一種ですが、ADHDやアスペルガーなど、他の発達障害を併存していることもあります。
図解 よくわかる大人のADHDによると、LDの30-50%がADHD、ADHDの30-50%がLDとも言われています。
LDの7つの特徴
1.文字をスラスラ読めない(読字障害)
2.文字を正しく書けない(書字障害)
3.計算が苦手(算数能力障害)
4.地図が読めない、場所がわからない(空間認知障害)
5.話を聞けない
6.うまく話せない
7.不器用 (発達性協調運動障害)
特によく見られるのが、文章をスラスラ読めない読字障害で、「ディスレクシア」と呼ばれています。
英語や漢字のように、ひとつの文字の読みが、その時々でいろいろ変わるものは、透明性が低く、ディスレクシアの人にとって読むのが困難です。
ディスレクシアの人は「透明性の低い」言語がとくに苦手なので、英語圏ではディスレクシアの発生率も高いそうです。
また「時間感覚の障害」を伴っていることが少なくありません。
ディスレクシアの研究者であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のBuonomano准教授は、ディスレクシアの原因そのものが時間感覚の障害にあるのではないかという大胆な仮説を立てています。
LDの対策 保護者用
1.LDということを伝える
親は子どもに、LDについてしっかり説明し、子どもが自分で対処してゆけるよう助ける必要があります。
すでに述べたように、「障害」だと伝えるのではなく、子どもの理解力に応じて、「特性」について説明します。
同様に、子どもと接する家族や教師、周囲の人たちにも、わかりやすい言葉で説明しておきましょう。苦手なことだけでなく、得意なことも胸を張って伝えておきましょう。
2.あらかじめ対応をシミュレートしておく
年齢が進むにつれ、自分で友だちや先生に、自分の特性について説明できるように、そして何かができないときにはどう対応したらよいのかわかるように、家でシミュレーションしておきます。
実際に起こりそうな場面を想定してください。たとえば忘れ物をしてしまう、先生の指示が理解できないなどです。
そして、親が先生役、友だち役になり、子どもに対応を考えさせます。場面を演じて、対応を練習しておくことで、自信がつき、トラブルにも落ち着いて対処できるようになります。
3.違っていることの価値を教える
「みんなと同じようにやる」よう求めるよりも、「みんなと違っていることの良さ」を教えます。
子どもが気づいていない良い点を探してあげて、「確かに、◯◯は苦手だけど、△△は得意だね」、と言って、子どもが苦手なことだけでなく、得意なことを自覚できるよう助けます。
もし親や親族にもLD傾向があるなら「じつはお父さんも同じなんだ。こんなふうに対処してきたんだよ」と話してあげるのも大切です。
場合によっては、LDの有名人の伝記を引き合いに出すことも可能かもしれません。
4.「できる」方法を探す
子どもが何かできないこと、苦手なことに直面した場合は、「なんでできないの」「もっとがんばりなさい」と言うのではなく、できるようになる別の方法を一緒に探します。
すると、子どもは、一見できないように思えることでも、工夫して対処すれば解決できるのだ、ということを学び、何かのことで行き詰まっても、進んで対処法を探すようになるでしょう。
5.得意なことを伸ばす
苦手なことを伸ばそうとしても、それは脳の特性によってできないことなので、子どもにとっては苦痛です。
ソーシャルスキルや自己管理の方法などは身につけさせる必要がありますが、基本的には、得意なことを伸ばし、得意な能力を用いて苦手なことを補うよう助けます。
6.専門家、教育機関と協力する
2007年から、LDやADHDのための特別支援教育がスタートし、発達障害に配慮してくれる先生も少しずつ増えてきました。
例えば、DO-IT Japanでは、学習障害に対してテクノロジーを活用した学びの保障などを支援しています。
一昔前と比べ、フリースクール、通信教育、特別支援学校、職業訓練学校など、通常の学校生活以外の選択肢も増えました。
それらをよく見比べ、子どもとも相談し、子どもに合った環境を作ることができます。
無理にほかの子どもと同じ進路に進ませると、不登校になることがあります。
逆に、親の決定を子どもに押しつけても、みんなと同じようにさせてもらえなかったという不満が生じます。
親子の意思の疎通を大切にして、一緒に進路を選びましょう。
LDの対策 本人用
1.読むのが難しい人に
■タブレットとアプリを使いこなす
■明るさや色みを変える (アーレンシンドローム)
■オーディオブックを活用する
■OCR(光学文字認識)によるテキスト変換
2.書くのが難しい人に
■音声入力アプリ
■ポメラ
■マインドマップ
■フローチャート(流れ図)
■KJ法
■筆記用具の工夫
3.時間感覚がわからない人に
■タイムタイマー
■視覚型のタスク管理ツール
4.「向かない仕事」を知っておく
日本の教育で幅をきかせている「まんべんなくできる」ことを目指すと、LDの子どもは落ちこぼれになってしまいます。
LDの「障害」としての側面に目を留めると、不登校や非行、二次障害につながることさえあります。
しかし、「与えられた才能」のほうに目を留めれば、大きく飛躍する可能性を秘めています。
「個性」に目を留めるなら、それを伸ばして、「才能」にすることだってできるのです。
そのためには、LDについてよく知り、柔軟な仕方で、子どもに合った接し方、教え方をすることが必要です。
私の知り合いにLDの子供をもつ方がいます。その方は専門家の先生と連携を取りながら、マインクラフトというゲームを使用してお子さんの個性を伸ばされています。
それはびっくりするような作品を作り上げているそうです。