「アメリカの富裕層では、子供を高身長にする為、健康上まったく問題のない「我が子への、ヒト成長ホルモン(HGH)投与」を求める親が後を絶たたない」というニュースがありました。
どういった治療なのか、成長ホルモンの特徴とあわせて調べてみましょう。
米国の富裕層による成長ホルモン治療
- 治療の継続期間は一般的に「3年から5年ほど」
- 投与の時期は10歳前後
- 男児が多い
- 費用は期間の長さにもよるが、効果を最大化させるには3000万円以上
- 投与による効果は3.5cmから7.5cmの伸び
世代を超えるような長期的な影響はまだわからないとのことです。
成長ホルモン投与による先端巨大症
指を伸ばしたいピアニスト、バイオリニスト、足を伸ばしスタイルを良くしたいダンサー、バレリーナ、モデルなどが、成長ホルモンのドーピングにより(先端巨大症を)発症している場合では、四肢が異常に長くなる一方で身長が伸びなかったり、身体のほかの部分の筋肉が萎縮したり、骨がもろくなったりするため、これらの薬剤の使用者で社会復帰する人は非常に少ない。
骨の成長完成後の投与だと、先端巨大症をひき起こしやすくなるそうです。
外部からの投与の種類
◆成長ホルモン注射
1.成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療として(保険適用)
2.運動能力向上薬物として
プロスポーツ界ではドーピングとして「競技会外検査で禁止されている物質」に定められている。
3.美容・アンチエイジングとして
成長ホルモンの分泌は加齢と共に低下するため、美容外科などで利用されている。
◆舌下投与
舌下に成長ホルモンをスプレーし、粘膜から吸収する方法。日本では医薬品に分類される。
成長ホルモンの特徴
身長を伸ばし、運動能力を向上させ、美容にも良いとされる成長ホルモンとは一体どんな作用があるのでしょうか。
成長ホルモンは直接働く場合と間接的に働く場合があります。
間接的に働く場合、成長ホルモンが肝臓などにはたらきかけ、IGF-1(インスリン様成長因子-1、別名ソマトメジンC)を分泌させ、それらが標的器官に働きかけます。
成長ホルモンには成長に関する作用と代謝をコントロールする作用がありますので、それぞれ見ていきましょう。
成長に関する作用
主にIGF-1を介して起こり、標的器官の細胞分裂を盛んにさせる。
- 骨の伸長 — 幼児期に骨端の軟骨細胞の分裂・増殖を促し、骨を伸張させる。
- 筋肉の成長 — 特定のアミノ酸の取り込みを促し、タンパク質合成を促進する
◆糖質コルチコイド(コルチゾール 等)の分泌によってIGF-1産生が抑制される→つまりストレスがかかると成長が阻害される。
◆血中IGF-1の量は、前立腺癌、乳癌、結腸直腸の発生率と正の相関にある。→つまり成長ホルモンが多いほど性ホルモン依存性がんリスクが増加する。
◆グリシンにIGF-1を減らす効果があったとする動物実験の結果がある。
代謝に関する作用
成長ホルモンが直接作用する場合、IGF-1を介す場合の両方がある。
- 代謝促進 — 炭水化物、タンパク質、脂質の代謝を促進する。
- 血糖値上昇 — 肝臓でのグリコーゲン分解を促し、また抗インスリン作用(インスリンを抑制し、血糖値を上昇させる)を持つため、血糖値を一定に保つ。
- 恒常性の維持 — カルシウム濃度などを一定に保ち、体内の恒常性を維持する。
- 体脂肪動員の促進 — エネルギー不足の状態の時、脂肪組織から遊離脂肪酸の形で放出させる。
成長ホルモン不足や過剰の影響
- 分泌不足 — 成長ホルモンの分泌が小児期に少ないと、成長ホルモン分泌不全性低身長症をおこす。
- 分泌過剰 — 成長ホルモンの分泌が亢進することにより、骨の成長が完成前であると巨人症をひきおこし、完成後であると先端巨大症をひきおこす。
成長ホルモン過剰分泌により以下の症状が現れる。
- 唇が厚くなる。
- 額が突き出る。
- 下あごがせり出る。
- 四肢の異常な発達。
- 四肢以外の筋肉の収縮。
- 骨がもろくなる。
先端巨大症とは名前の通り体の先端から肥大していく病気である。
症自体には生命の危険は無いが、先端肥大症を放っておくと、死亡する確率が2倍以上になり、寿命が10年前後短くなると言われている。
骨発育停止前に成長ホルモンの分泌が過剰に起こる場合には下垂体性肥大症と呼ばれ、身長や四肢や指の異常成長が見られる。
成長ホルモンが分泌促進する状況
◆睡眠
成長ホルモンは睡眠中に2時間から3時間の間隔で下垂体前葉より分泌される。
したがって、子供の成長や創傷治癒、肌の新陳代謝は睡眠時に特に促進される。
◆運動
一般的な筋トレや高強度の持久的運動などの、強度の高い運動を行なうと血中の成長ホルモン濃度は200倍程度に増加する。また睡眠中にも同程度に増加する。
◆加圧トレーニング
体外から成長ホルモンを投与するのではなく、腕や足をベルトで加圧し血流量を制限することで体内からの成長ホルモン分泌増加を促すトレーニング方法。
一般的な筋トレと比べ、低負荷強度の運動で成長ホルモンの分泌亢進が起こる。
◆アルギニン負荷試験
成長ホルモン分泌不全性低身長症の補助診断に、人為的にアミノ酸のアルギニンを静脈投与し、成長ホルモンの増加反応を測定する方法。
成長ホルモンと免疫
成長ホルモンには免疫亢進作用があります。ピークである思春期の時期は免疫が強いという事でしょう。
【加齢による分泌量】
10代後半が成長ホルモンのピークで、加齢により徐々に減少してきます。肌の新陳代謝や傷の治りが遅くなるのも分泌が減るからなのでしょう。